どんな歯並びが矯正に向いている?ぴったりな方法の見つけ方-パート1-

どんな歯並びが矯正に向いている?ぴったりな方法の見つけ方

「自分の歯並びが気になるけれど、矯正が本当に必要なのだろうか」と疑問を抱く方もいると思います。何不自由なく生活ができていれば、歯の心配を抱く可能性が低いからです。

歯やお口のトラブルが発生していないなら、なおさら気に留めることもないでしょう。

しかし、いざ歯科医師に診てもらうと実は矯正が必要だった、と知るパターンもあるのです。

そこで本記事では、どのような歯並びであれば矯正を行うのがよいのかを解説していきます加えて、矯正方法におけるメリット・デメリットや自分に合った方法の見つけ方もご紹介。

後半は、診断や通院などが不要な矯正方法も説明しますので、チェックしてみてください。

矯正したほうがいい歯並びとは?

矯正したほうがいい歯並びとは?

矯正を行ったほうがいい具体的な症例を下記9つにまとめました。

矯正を行ったほうがいい具体的な症例
  • 叢生
  • 正中離開
  • 狭窄歯列
  • 空隙歯列
  • 上顎前突
  • 下顎前突
  • 過蓋咬合
  • 開口
  • 交叉咬合

1. 叢生(そうせい)

叢生とは、歯が密集して生えている状態のこと。歯の大きさと顎の大きさの間に起こるアンバランスにより発生してしまいます。

放置すると歯周組織や歯肉が炎症を起こし、歯周病の原因になる可能性が高いです。そのため、矯正治療を行い叢生を改善すれば、歯周病の予防に繋がります。

加えて、歯の審美性が向上するため、見た目にもよい影響をもたらしてくれるでしょう。

2. 正中離開(せいちゅうりかい)

正中離開とは、上の前歯の中心に隙間がある状態のことです。歯と顎のアンバランスさや歯の本数が少ないことで生じます。

治療を行わないでいると、歯列の美観性が悪化したり歯周病のリスクが増加したりするため、早めに矯正するのがおすすめです。

適切な施術を受ければ、歯周病が予防できます。歯列の中央にある歯が正しい位置に戻るので、口腔内の清掃もしやすくなるでしょう。

3. 狭窄歯列(きょうさくしれつ)

狭窄歯列とは、歯が密集し、歯間隙が狭くなっている状態のこと。場合によっては叢生も引き起こしている可能性もあります。

歯の隙間が狭くなっていると口腔内の清掃がしづらくなるため、歯肉炎・歯周病の発症リスクが増加します。

歯科矯正を行えば、狭くなっている歯並びを広げることが可能です。また、正しい噛み合わせに戻るので、咬合疲れや顎関節痛などの不調を軽減できるでしょう。

ただし、狭窄歯列の矯正には、専門医・歯科医による詳細な診断や指導が必要です。

4.  空隙歯列(くうげきしれつ)

空隙歯列とは、歯と歯の間に隙間が空いている歯並びのことです。歯間隙が広い歯列の状態で「すきっ歯」とも呼ばれています。

審美面や噛み合わせの不調を引き起こす可能性があり、歯肉や歯周組織に負担をかけることも。歯の隙間が広いと食べかすが詰まりやすいので、放置をすると虫歯や歯周病が発症します。

空隙歯列を矯正すれば、虫歯や歯周病の予防になります。審美性も改善するので、見た目にもよい影響を与えるでしょう。

5. 上顎前突(じょうがくぜんとつ)

上顎前突とは、上の歯列が下の歯列より前方に出ている状態のこと。「出っ歯」とも呼ばれています。小さい頃の過度な指しゃぶりや舌で前歯を押す癖などが原因です。

矯正治療を行うことで、前方に出ていた前歯が戻るので、きれいな歯並びになります。見た目にも影響が出ると、自信にも繋がるでしょう。加えて、口呼吸が治る可能性があるので、歯肉の炎症や歯周病のトラブルが防げます。

6. 下顎前突(かがくぜんとつ)

下顎前突とは、上下の噛み合わせが逆で、下の歯列が上の歯列よりも前方に出ている状態のことです。反対咬合やしゃくれなどとも呼ばれています。

上下の噛み合わせが逆なので、食べ物が噛みにくくなります。発音にも悪影響となるので、早めの矯正治療がおすすめです。

歯科矯正を行えば正しい噛み合わせになるので、食べ物が噛みやすくなります。審美面にも好印象となるので、自信にも繋がるでしょう。

7. 過蓋咬合(かがいこうごう)

過蓋咬合とは、歯を噛んだ時に上の歯が下の歯に対して過度に覆いかぶさってしまう状態のこと。主な原因は、遺伝的な理由や舌の癖などが挙げられます。

放置をすると、食べ物が食べづらいだけではなく、顎関節症が起きることも。噛み合わせが深いため、下の歯で上の歯茎を傷つける可能性もあります。

矯正をすれば、きれいな歯並びになるので、食事を楽しめるようになるでしょう。歯茎を傷つける心配もありません。

8. 開口(オープンバイト)

開口とは、上下の歯が噛み合わず前方に開いている状態のことです。上下の歯列に隙間が生じるだけではなく、口元も開いてしまう場合があります。子どもの頃に舌で前歯を押す癖によって発生するのが主な原因です。

食事に不自由をもたらすだけではなく、見た目にも悪影響となるので、早期対応が求められます。

小児であれば矯正治療のみで対応できることが多いです。一方、成人の方で症状が重症化していたり骨格的に問題があったりすると、外科手術を行うケースもあります。

9. 交叉咬合(クロスバイト)

交叉咬合とは、歯並びの途中で交叉している状態。一般的な歯列は、上下の歯が対面していますが、交叉咬合は上の奥歯が下の奥歯の内側に入ってしまいます。

歯並びが乱れているため適切に歯磨きが行えず、虫歯・歯周病・歯肉炎などのお口のトラブルを引き起こすのです。加えて、偏った顎の使い方になってしまうため、頭痛や肩こりなどにも繋がります。

矯正治療を行えば噛み合わせが改善するので、以前よりも食べ物を咀嚼することが可能になります。頬や顎などの顔全体の筋肉を動かせるようになるため、表情筋アップにも繋がるでしょう。

こんな場合は矯正を急がなくても大丈夫

歯列矯正は、たしかに歯並びをきれいにしてくれますが、必ずしも全員が必要とは限りません。

  • 歯並びの見た目が気にならない
  • 噛み合わせが悪くない
  • お口のトラブルがない

上記に当てはまる方であれば、矯正治療を急がなくても大丈夫です。

「矯正治療を行うから良い」「矯正治療をしないから悪い」わけではないので、問題が特にないなら心配はいらないでしょう。

矯正の種類

矯正の種類

矯正治療は大きく分けると「ワイヤー矯正」「マウスピース矯正」の2つです。

ワイヤー矯正は、歯に「ブラケット」と呼ばれる器具を着けて、器具にワイヤーを通します。ワイヤーの力によって歯列を動かしていくのです。

マウスピース矯正は「アライナー」と呼ばれる透明のマウスピースを歯列に装着します。ご自身で着脱が可能なので、食事や歯磨きの際に取り外しが可能です。

個人差はありますが、ワイヤー矯正より不快感が少ない傾向にあります。使用するメーカーによっては、短期間で治療が完了する場合も。

ワイヤー矯正

ワイヤー矯正の中でも器具を「表側に装着するのか」「裏側に装着するのか」で、メリット・デメリットが異なります。

具体的なポイントを押さえておくと、実際に矯正を行う際の参考となるでしょう。

表側矯正

表側矯正とは、矯正方法の中でも最もポピュラーな方法。歯の表面にブラケットと呼ばれる装置を着けてワイヤーを通し、ワイヤーの力で歯列を整えていきます。

最近では、白色系の透明なセラミックブラケットを使用する方も増えています。セラミック素材なので矯正装置があまり目立ちません。加えて、ホワイトワイヤーを一緒に合わせて、ワイヤー部位も透明にする方もいます。 

表側矯正のメリット・デメリットは以下の通りです。

メリットデメリット
・対応できる症例が幅広い
・素材を選べば目立ちにくい
・汚れが清掃しやすい
・装置が目立ちやすい
・装置が当たって口が閉じにくい
・口内が傷つくことがある

また、費用相場・矯正期間は選ぶクリニックやご自身の症例でも異なりますが、一般的な目安を以下の表にまとめました。

全体矯正部分矯正
費用相場60万〜70万円30万〜60万円
矯正期間1年〜3年程度2ヶ月〜1年程度

裏側矯正

表側矯正が歯の表側に矯正装置を取り付けているのに対し、裏側矯正は歯の裏側に装置を取り付けて治療を行うものです。

また、上下歯の裏側に装置を取り付けて行う矯正を「フルリンガル」。上の歯の裏側・下の歯の表側に装置を取り付ける場合は「ハーフリンガル」と言います。

基本的には、歯の裏側に矯正装置を取り付けるため、見た目に表れず目立たないのが特徴です。そのため「目立たない矯正」とも呼ばれています。

裏側矯正のメリット・デメリットは以下の通りです。

メリットデメリット
・装置が目立ちにくい
・歯周病や虫歯になりにくい
・表側矯正より費用が高額になる
・表側矯正より矯正期間が長くなる

裏側矯正は、矯正器具の制作や高度な技術が必要なため、治療費が高額になる傾向があります。しかし、装置を着けていても目立ちにくいので、見た目を気にしている方にはよいのではないでしょうか。

費用相場・矯正期間もまとめましたので、こちらも参考にしてみてください。

全体矯正部分矯正
費用相場100万〜170万円40万〜70万円
矯正期間2年〜3年程度5ヶ月〜1年程度

矯正期間に関しても表側矯正と比較すると長くなる傾向ですが、個人差もあるので、歯科医に一度相談してみるのがおすすめです。

マウスピース矯正

マウスピース矯正は「アライナー」と呼ばれるクリアのオリジナルマウスピースを使用して、歯列を整えていきます。ワイヤー矯正とは違い、金属の装置ではないので、口腔内を傷つける心配もありません。

部分矯正にも対応しており、前歯だけの部分矯正をしたい方にもおすすめです。

また、患者さまご自身でマウスピースを取り外しができるので、食事やブラッシングのしやすさがあります。ただし、装着時間を守らなければ正しい効果は得られません。

自己管理が必要な矯正方法と言えるでしょう。

メリット・デメリットは以下の通りです。

メリットデメリット
・矯正装置が目立ちにくい
・口腔内が傷つきにくい
・適応できる症例に限りがある
・装着時間を守らないと効果が出にくい

続いて、費用相場と矯正期間の目安をまとめました。

全体矯正部分矯正
費用相場60万〜100万円10万〜70万円
矯正期間1年〜3年程度5ヶ月〜2年程度

症例にもよりますが、マウスピース矯正のほうが医療費・治療期間は安い傾向にあります。なるべく早く終えたい・安く抑えたい方には適していますが、適応可能な症例があるので、場合によっては受けられないこともあります。

パート2では、自分に合った矯正方法をどのように選べばよいか解説します。

パート2はこちら

監修者情報

医療法人隆聖会 吉見歯科グループ 理事長 吉見洋志
・医療法人隆聖会理事長・総院長
・北海道大学病院 客員臨床教授
・セブ医科大学 客員教授(フィリピン)